【パリの屋根の下で】山口昌子 新型インフルは“外敵”“国難” フランスで新型インフルエンザの感染者が確認された2日以降、内務省でアリヨマリ内相、バシュロナルカン保健相がウッサン保健次官とベベール国立衛生監視研究所長とともに土日返上で会見を行っている。
メキシコでの発症が伝えられ始めた4月25日から5月1日までは保健省で次官と所長が土日もメーデーも返上して会見した。5週間の有給休暇と週35時間労働が法律で規定されている“バカンス天国フランス”で、休日返上は極めて異例の事態だ。新型インフルエンザが国家総動員に値する“外敵”、あるいは、“国難”扱いであることがわかる。
加えて毎回、会見で、「フランスの対応は他国に比較して最良」を繰り返されると、フランスが今も昔も中央集権国家、という認識を新たにさせられる。この認識を裏付けるかのように、内務省の会見室にはレジオン・ドヌール勲章の最高章、グラン・クロワを携帯したサルコジ大統領の公式写真や17世紀のロアン将軍など内務関係者の肖像画が掲げられている。ルイ王朝から第五共和制の現在まで体制は変わっても内務省の伝統も性格も脈々と継承されているというわけだ。
換言すれば、いかなる体制だろうが、国家権力が強くないと、この自分勝手でエゴイストのフランス人は御しがたいということなのかもしれない。
仏外務省は4月25日に既存の危機センターに特別回線を開設し、保健省も26日に危機センターを設けて対応しているが、感染者の確認後は各省間危機室を通して内務省が情報を収集して統括中だ。内務省には大災害やテロに備えた危機管理室があり、「15分で大統領に情報が届くシステム」(関係者)もある。
5日からは新聞、テレビ、ラジオがいっせいに政府広報を掲載し、パリ郊外シャルル・ドゴール国際空港などではメキシコからの到着便は特別滑走路を使用して他国からの到着便とは隔離された。
ウッサン次官は悪性の鳥インフルエンザが蔓延(まんえん)したシラク前政権時代の2005年に鳥インフルエンザの各省間対策室長に就任。07年の政権交代後も同職で現在は新型インフルエンザを担当している。その前は臓器移植の大家でパリ市内の公立病院の外科部長だった。「優秀な人材は広く国家のために尽くすべし」とのこれまた中央集権的な仏式人材哲学によって今やこの道の専門家だ。
次官によると、フランスには5月初旬現在、リレンザ900万用量、粉状のタミフル2400万用量、カプセル状のタミフル900万用量とマスク約1億枚のストックがある。「仏領土内の外国人はフランス人扱い」ということで、日本人も内相らが自慢する「最良の対応」の恩恵を受けられる。この点は自由、平等、博愛のフランス共和国の国是のおかげといえそうだ。
日本の場合、国家より「日本株式会社」の呼称が象徴するように企業単位。パリの日本企業でもタミフルなどが届いたり届かなかったりと差があるだけに、この措置はありがたい。
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090506/erp0905061452003-n1.htm
PR