豚インフル 衛生環境か医療水準か メキシコと先進国に差世界的に感染が広がる豚インフルエンザ。だが、メキシコの感染者が千数百人、死者百人以上なのに対し、欧米諸国の感染者は数十人以下で死者は出ていない。なぜメキシコに被害が集中しているのか。海外の新型インフルエンザに詳しい元小樽市保健所長の外岡立人さん=北海道小樽市=らに聞いた。
米国などで見つかった感染者の大半はメキシコからの帰国者のため、現在の感染はメキシコが中心といえそうだ。外岡さんは「メキシコ市は人口過密なため、ウイルスが入れば相当広まりやすい環境だ」と指摘する。
ただ、そのウイルスがどこから来たのかは全くの謎。「豚はヒトや鳥などのインフルエンザに同時に感染しやすく、豚の中で遺伝子の組み換えが起こる。普通は少し構造が変わる程度なのに、今回は全く従来見られなかった組成。なぜできたのか分からない」と首をひねる。
通常のインフルエンザは一人の発病者が周辺の三人に感染を広げるとされるが、今回、メキシコからの帰国者の周囲で感染が多発している報告はない。
外岡さんは「新型肺炎(SARS)のように病原性が強ければすぐ分かるが、症状が軽いと、感染が広がっていても政府などが気づかない可能性もある。インフルエンザは風邪と似た症状で、過去のスペイン風邪などでも(発生源は)よく分からなかった」と話す。
今回の豚インフルエンザはどの程度の毒性なのか。仮にメキシコの潜在的な感染者が数万人いたとすれば、死者が百人出ても死亡率は1%未満。「通常のインフルエンザでも死亡率は0・1-0・3%」で、死亡率はやや高い程度となる。外岡さんは「メキシコに比べ、米国などは感染者数が少ないため、重症化する率が低いのかもしれない」と話す。
他の発生国は欧米の先進国ばかりで、衛生環境や医療水準でメキシコと差があるという指摘もある。「人口密度が高いアジアに広まったときが怖い」と危惧(きぐ)する研究者もいる。
日本とメキシコの友好団体の担当者は「現地は貧しい人も多く、ニワトリや豚と居住空間が一緒の家もある。生活環境が悪く、栄養状態の良くない人などが感染したのではないか」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009042802000065.html
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