新型インフル「パンデミック」秒読み 世界保健機関(WHO)の当局者は3日、新型インフルエンザの警戒水準について「感染の勢いが衰えない。ここ何日という問題」と、フェーズ「5」から世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」に引き上げる可能性を示した。「症状の重さでなく地理的な拡大」を強調する声もあり「マイルド(軽微な症状の)パンデミック」にとどまる場合もある。一方、大型連休で混雑する成田空港では、検疫官が「1週間近く家に帰っていない」と、激務に追われた。
WHOがフェーズ「6」への引き上げの判断を迫られているのは、英国、ドイツ、スペインなど欧州地域を中心に感染者の確認が増え、発生源とされるメキシコへの渡航歴のない人を巻き込んだ「地域社会レベルの持続的感染」が確認される可能性があるためだ。同当局者によると、決め手となる「人―人―人」の3代にわたる感染報告が欧州諸国から出始めている。WHOの警戒水準の定義を適用すると、北米以外で持続的な感染が確認されれば引き上げ条件が整う。
感染が確認された国・地域はアイルランドなどが加わり計19となった。WHOのライアン警戒対策部長は「症状の重さでなく地理的な拡大」を強調した。「6」でも、従来通り国境閉鎖や渡航制限の勧告が伴わない形となる可能性もある。各国政府や有識者からは社会的影響力から「簡単に上げるわけにはいかない」との声が聞こえる。
一方、感染警戒に当たる成田空港では先月28日から連日、北米とメキシコからの到着便すべてに機内検疫を実施。空港検疫官に、ほかの検疫所や防衛省の応援組を合わせ100人態勢でしのいでいるが、大型連休の影響で激務は増すばかりだ。「いつまで待たせるんだ」。長時間、機内検疫の順番を待ち、いら立った航空会社職員が若い検疫官を怒鳴りつける場面も。激務で体調を崩し、現場を離れる検疫官もいる。「1週間近く家に帰っていない。早く終わってくれれば」と検疫所職員は疲れた表情を見せるが「厳しい状況だが、やるしかない」と語った。
機内検疫の対象は多い日で38便あり、集中する時間帯もある。到着先は離れた2つの旅客ターミナルの各ゲートに分散し、空港が2つあるようなもの。応援組の検疫官には、慣れない空港内の移動も一苦労だ。検疫官は、機内で乗客1人1人に質問票を配布、回収し、サーモグラフィーで体温をチェック。体調不良の乗客には問診や簡易インフルエンザ検査をする。1便に数時間を要することもあり、対象は1日1万人を超える。厚生労働省は帰国ピークの5日から応援だけで約170人の投入を決めた。同省担当者は「引き続き現場に努力をお願いしないといけない状況」と話した。
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