パンデミックに挑む:押谷仁さん=東北大教授(ウイルス学) ◇専門家ばかりでなく国民も議論する場を--押谷仁さん(50)
<世界保健機関(WHO)の感染症地域アドバイザーとしてマニラに赴任していた02年、新型肺炎(SARS)が発生。事態収束の現場指揮にあたった。帰国後、その経験から政府の新型インフルエンザ対策に厳しい注文をつけ続け、行動計画の改定につながった。新型インフルエンザの発生以降、連日メディアに登場。状況分析と対策の要を説き続けている>
医学を志したのは世界を舞台に活動したかったから。インフルエンザを研究したが、研究室にいても面白くない。卒業後間もなく、JICA(現在の国際協力機構)の仕事で3年間、アフリカのザンビアで感染症対策に当たった。
その後、公衆衛生学を学ぶため、米国に留学。その時、香港で鳥インフルエンザが発生した。それまでも専門家の間で話題になっていたが、新型は本当に発生すると強く意識するようになった。
SARSを経験して帰国した時、国内の新型インフルエンザ対策は当初、水際対策と地域封じ込めだけで、国内発生後の対策は何も考えていなかった。
今回新型インフルエンザが発生し、世界的大流行(パンデミック、フェーズ6)目前の状況だ。専門家ばかりで議論しても仕方がない。国民にも冷静に地域で議論する場を作ってほしいと願っている。【聞き手・関東晋慈】
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■人物略歴
◇おしたに・ひとし
東京都出身。東北大医学部卒。99~05年、WHO西太平洋地域事務局の感染症地域アドバイザーとして、発生したSARS対策の指揮を執ったほか、新型インフルエンザ対策を練った。05年9月から現職。
http://mainichi.jp/life/today/news/20090505ddm013100143000c.html
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