豚インフルエンザの拡大が続く中、厚生労働省はワクチン製造の検討に入った。ワクチンが開発されれば、ウイルスの感染予防に大きな効力が期待できるものの、すぐには製造できないなど多くの課題が横たわっている。
インフルエンザにも、Aソ連型、B型といった既存のタイプのウイルスについてはワクチンが存在する。日本でも例年、秋から冬にかけて多くの人が接種している。
だが、今回流行している、人から人へと感染する豚インフルエンザワクチンは、まだ開発されていない。そのため、厚労省は豚インフルエンザのワクチン製造の検討に入った。状況は各国とも同じとみられる。
開発に向けた課題は多い。
そもそも現段階で日本国内には、ワクチンとして培養すべき豚インフルエンザウイルスの株(標本)がまだ存在しない。現在、世界保健機関(WHO)を通じて、米国が持つウイルス株を譲ってもらえるよう交渉中だが、厚労省は「まだなんとも感触を得ていない」という。
さらに、ワクチンは、鶏の有精卵にウイルスを接種し、培養されたものを不活化処理してつくるが、国内の製造能力は年間2500万~2800万人分と限られる。すでに来冬用の季節性インフルエンザワクチンの製造準備は始まっており、製造能力いっぱいを豚インフルエンザワクチンに振り向けることは不可能だ。
舛添要一厚労相は27日、「季節性インフルエンザ用の製造を一時停止しても、豚インフルエンザワクチンを優先する」と表明した。
しかし、「今回のウイルスが、健康被害が軽症なウイルスだとすると、季節性ワクチンの製造をすべてやめて、豚インフルワクチンをつくる必要があるのかということも考えないといけない」(岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長)という指摘もあり、バランスをどうとるかも課題だ。
厚労省の新村和哉血液対策課長は「増産のため、もっと多くの有精卵の確保ができないか。高齢者など、インフルエンザの影響を受けやすい人に接種勧告の対象を絞り込むことはできないかなど、さまざまなシミュレーションをしている」と話す。
だが、岡部センター長が「通常、次のシーズンに向けて有精卵を確保するわけで、急に2倍の量をつくるといってもできない」とも指摘する。
ワクチン開発が着手されても、すぐに製品が流通するわけではない。厚労省は「ワクチン株を入手して、最初のワクチンができるまで早くても数カ月かかる」と説明する。
今回の豚インフルエンザウイルスが、増殖の早いタイプなのか遅いタイプなのかも判明していない。ワクチンの開発を急ぐあまりに、安全性がおろそかになってもいけない。
厚労省は「新たなデータも今後入ってくるはずなので、ウイルスやワクチンの専門家たちと相談をしながら、慎重かつ迅速に進めていく」としている。
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090427/bdy0904272327025-n1.htm
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